ティーショット2026-07-14

フェード・ドロー・スライス・フックはなぜ出る? ——出球は「フェースと軌道」で決まる

結論から言うと、出球(球の飛び方)は2つの原理だけで決まります。①打ち出す方向はフェースの向き、②曲がりはフェースと軌道の差——フェースが軌道より開けば右へ、閉じれば左へ曲がります。この2つが分かると、フェード・ドロー・スライス・フック・チーピン(ドロップ)がなぜ出るのかを自分で説明でき、練習場で「なんかおかしい」と迷うことがなくなります。

練習場で球が乱れたとき、グリップを変え、スタンスを変え、スイングをいじり……それでも直らず「今日はダメだ」と球を打ち続けていませんか。原因を名指しできないまま手を変え品を変えるのは、地図を持たずに道を探すようなものです。

当研究所の研究員Bも、まさにそうでした。でも出球の原理はシンプルで、覚えるのは上の2つだけ。この記事では、5つの出球(+チーピン)がどう出るかを図と表で整理し、アマとプロの持ち球データまで示します。

出球は「フェースの向き」と「軌道」で決まる

打ち出す方向は、フェースが決める

かつては「ボールは振った方向(軌道)に飛ぶ」と教えられていました。しかし計測器の普及で分かったのは、打ち出し方向の大半(およそ75〜85%)を決めているのはインパクト時のフェースの向きだということです1。ざっくり言えば、ボールはフェースが向いた方向に出ていきます。だから「まっすぐ振ったのに右に出た」ときは、軌道ではなくフェースが右を向いていた、と考えるのが正解です。

曲がりは「フェースと軌道の差」で決まる

では曲がりは何で決まるのか。フェースの向きと軌道(スイングの方向)の差です。フェースが軌道より右を向いていれば(開いていれば)右回転がかかって右へ、左を向いていれば(閉じていれば)左へ曲がります。そして差が大きいほど、曲がりも大きくなります。

右に曲がる球(フェード・スライス)は、フェースが軌道より開いたときに出ます。開きが小さければフェード、大きければスライスです。

フェードとスライスの出方の図。どちらもフェースが軌道より開いて右へ。フェースが少し開くとゆるく右(フェード)、大きく開くと大きく右(スライス)

左に曲がる球(ドロー・チーピン)は、フェースが軌道より閉じたときに出ます。閉じが小さければドロー、大きく閉じて軌道も左を向くとチーピン(ドロップ)です。

ドローとチーピンの出方の図。どちらもフェースが軌道より閉じて左へ。少し閉じるとゆるく左(ドロー)、軌道も左で大きく閉じると左へ低く急降下(チーピン)

つまり出球は「フェース(=打ち出し)」と「フェースと軌道の差(=曲がり)」の掛け算です。ここさえ押さえれば、どんな球も説明できます。

5つの出球(+チーピン)はこう出る

2原理を当てはめると、代表的な出球は次のように整理できます。

出球フェースと軌道の関係出る球
ストレートフェース=軌道(差なし)まっすぐ
フェードフェースがやや開く(軌道より右)ゆるく右へ(コントロール域)
スライスフェースが大きく開く大きく右へ
ドローフェースがやや閉じる(軌道より左)ゆるく左へ
フックフェースが大きく閉じる大きく左へ
チーピン(ドロップ)軌道が左+フェースが大きく閉じる左に出て低く急降下

6つの出球の軌道図。ストレートを基準に、右へ曲がるフェードとスライス、左へ曲がるドローとフック、左へ低く急降下するチーピン

フェードとスライスは「同じ向き」、違いは差の大きさ

表を見て気づくのは、フェードとスライスは同じ右曲がりで、違いはフェースと軌道の差の大きさだけ、ということです。ドローとフックも同じ左曲がりの大小違い。だから「スライスをドローに作り替える」のは大工事ですが、「スライスをフェードに近づける」のは差を小さくするだけ——ぐっと現実的になります。

チーピン(ドロップ)はなぜ低く急降下するのか

チーピン(ドロップ)は、フックの極端版です。軌道が左を向き、さらにフェースが大きくかぶって(閉じて)当たると、ボールは左に打ち出されて強い左回転がかかります。同時にフェースがかぶるとロフトが立って球が低く出るため、低い弾道で左へ曲がりながら急に落ちる——これがチーピンです。原因が「フェースのかぶり+左軌道」と分かれば、対処も「フェースを返しすぎない・軌道を右に向ける」と名指しできます。

データ:アマもプロも「右曲がり」が最多

面白いのは、アマもプロも最も多い持ち球が「右曲がり」だということです。

アマチュアの持ち球の割合の棒グラフ。スライス系44%が最多、フック系36%、ストレート9%、両方10%

日本のアマチュアの持ち球は、スライス系44.0%・フック系36.4%・ストレート9.4%(残りは両方)2。「9割スライサー」は言い過ぎで、実際はフック系も4割近くいます。ではプロはどうか。PGA Tourのデータでは、全ショットでフェード44%・ドロー32%・ストレート24%、ドライバーに限ればフェードは約50%です3

最も多い持ち球曲がる向き
アマチュアスライス系 44%
プロ(ドライバー)フェード 約50%

つまり最多はどちらも右曲がり。違いは量とコントロールです。フェードは「効かせて止めた小さいスライス」とも言えます。だから右に曲がる人は、無理に左曲げのドローへ作り替えるより、差を小さくして「使えるフェード」に寄せるほうが近道です4。曲がりを消しきれなくても、曲がる前提で狙えばOBは減らせます(ドライバーOBを減らす考え方)。曲がりの原因を絞って直す順番はスライスの原因は3つで扱っています。

なお、フェードとドローのどちらを磨くべきかは、自分の軌道や構える向きの癖によって変わります。選び方と打ち分けはフェードとドローの選び方と打ち方で解説しています。

研究員Bの体験——「見れば分かる」と「なぜそうなるか」は別だった

当研究所の研究員Bは、スライスもフックも「見れば名前は分かる」人でした。ところが、いざ自分の球が乱れると、「なぜ今の球がそうなったのか」を説明できない。だから練習場では手先を場当たり的にいじり、直ったのか偶然なのかも分からないまま「なんかおかしい」と悶々。コースでも一発ごとに原因が読めず、迷いながら振っていたと言います。

転機は、この2原理——打ち出しはフェース、曲がりはフェースと軌道の差——を言葉で持てたことでした。球を見て「打ち出しが右だからフェースが開いた」「大きく曲がったから差が大きい」と原因を名指しできるようになると、直す場所が1つに絞れる。練習が"当てもの"から"検証"に変わり、練習場でもコースでも迷いが消えたそうです。

大切なのは特定のスイングを身につけることではなく、「自分の球の原因を言語化できる枠組みを持つ」ことです。

まとめ

  • 出球は2つだけ。打ち出し=フェースの向き / 曲がり=フェースと軌道の差(開けば右・閉じれば左、差が大きいほど大きく曲がる)
  • フェードとスライス、ドローとフックは同じ向き。違いは曲がりの大きさ。チーピンはフックの極端版(左軌道+大きなかぶり)
  • アマもプロも最多は右曲がり。直すなら「反対に作り替える」より「差を小さくコントロール」

最後に一番大切なこと。出球を語れるようになったら、次の問いは「自分はどのミスでどれだけ打数を失っているか」です。原因が分かっても、それが自分の最大のロスとは限りません。まず自分のロス構造を知ることが、遠回りをなくす近道です。

出典

  1. 現代の飛球法則(D-plane)。打ち出し方向の大半はインパクト時のフェースの向きで決まる。Titleist Learning Lab(TrackMan計測にもとづく)。

  2. Myゴルフダイジェスト実態調査(2023・n=974)。熱心層・自己申告のため実際の分布とは差がありうる。

  3. PGA Tour Tour Tracker(2024)の集計(Golf Analytics)。10ラウンド以上の選手・スピン軸±2度でフェード/ストレート/ドローを区分。

  4. 右曲がりの影響の傍証: スコア105前後ではティーショットの約3割が右ラフに行く。Shot Scope(スコア105前後の基準値)。元データはハンデ25。

よくある質問 FAQ

打ち出す方向はフェースと軌道のどちらで決まる?

主にフェースの向きです。計測では、打ち出し方向のおよそ75〜85%をインパクト時のフェースの向きが決めています。ボールはおおむね、フェースが向いた方向に出ていきます。

スライスとフェードの違いは?

どちらも同じ「右曲がり」で、違いはフェースと軌道の差の大きさだけです。差が小さくコントロールできる範囲がフェード、差が大きくて大きく曲がるのがスライスです。ドローとフックの関係も同じです。

チーピン(ドロップ)はなぜ出る?

軌道が左を向き、さらにフェースが大きくかぶって(閉じて)当たると、ボールは左に打ち出されて強い左回転がかかります。同時にフェースがかぶるとロフトが立って低く出るため、低い弾道で左へ曲がりながら急に落ちます。

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