アプローチ2026-08-22

グリーン周りのクラブ選択は3段階 ——最初に考えるのはウェッジでなくパター

グリーン周りで最初に考えるのは、パターで行けないかです。 ウェッジは最後の選択肢——この順番を変えるだけで、寄せの打数は減らせます。

グリーンを少し外したとき、反射的にサンドウェッジを抜いていませんか。 そして「フワッと上げてピンにピタリ」を狙い、ザックリかトップで往復する。 この場面で失っている打数の多くは、技術ではなく番手選びの段階で決まっています。

この記事では、選ぶ順番と、迷ったときの判断基準を整理します。

アマチュアは、いちばん難しい番手を選びがち

先にデータから入ります。ロフトの立った番手のほうが、結果が良いという集計があります。

Shot Scopeの集計を見ます。平均的なゴルファーが8番・9番・ピッチングウェッジを使った場合と、 ギャップウェッジ・サンドウェッジ・ロブウェッジを使った場合の比較です。 低ロフト側のほうが寄せワン率が8ポイント高く、ピンまで約1.8m近くに寄っていました1。 ところが同じShot Scopeの集計では、アマチュアは高ロフトの番手を、 低ロフトの約2倍の頻度で使っていました1

つまり結果が良い番手ではなく、難しい番手を多く選んでいることになります。 これは当研究所が診断で扱っている「練習配分のギャップ」と同じ構図です。 損している場所と、時間や選択を割いている場所がずれている。

もうひとつ前提を置きます。スコア95〜105の層の寄せワン成功率は31%23回に2回は寄らないのが標準です。

寄せワン成功率のハンデ別比較。スクラッチ54%、ハンデ10で39%、ハンデ20(スコア95〜105)で31%。100切りを目指す層は10回のうち7回は寄らない

ピンに絡める前提で番手を選ぶと、選択が難しいほうへ寄っていきます。

選ぶ順番は3段階

やることは、難しい番手から選ばないことです。順番を先に決めてしまいます。

グリーン周りのクラブ選択の順番。第1段階はパター、第2段階は8番・9番・ピッチングなど低ロフト、第3段階はウェッジで上げる。上から順に検討し、使えない理由があるときだけ次へ進む

第1段階: パターで行けないか

まずパターを検討します。芝の上を転がせるなら、これがいちばんやさしい選択です。

Arccosの計測を見てみます。中〜ハイハンデのゴルファーの場合、 グリーンまでの芝が5〜15ft(約1.5〜4.5m)なら、パターのほうが平均約0.10打少なく上がっています。 15〜25ft(約4.5〜7.6m)でも約0.15〜0.25打少ない3。 最悪のパットは、最悪のチップより3〜6ft近くに残るとも報告されています3うまくいかなかったときの傷が浅い——ここがパターの本質的な強みです。

レッスンプロの生見和己さんも、グリーン周りでの第一選択について「プロもグリーンまわりでの第一選択は『パターでいけないかな?』」と述べています。 そのうえで「アマチュアは『パターでの寄せ』を積極的に行なうべき4

第2段階: 低ロフトで転がせないか

パターが使えないなら、次は8番・9番・ピッチングです。ウェッジには行きません。

デビッド・レッドベター門下のコーチ、吉田洋一郎さんは8番アイアンをこう説明します。 「ロフトが立っている8番アイアンは、ウェッジよりフェースでとらえることが容易で 小さな振り幅で長い距離が出るミスの少ないクラブと言える」5。 振り幅が小さくて済むぶん、ミスの幅も小さくなります。

打ち方は難しく考えなくて構いません。中井学プロは 「打ち方はパッティングストロークと全く同じ振り方をします。 ロフトがある分だけ勝手にボールが上がるという方法」を勧めています6

なお、番手ごとにどれだけ転がるか(キャリーとランの比率)と落とし所の決め方は、 アプローチは落とし所を先に決めると寄るに詳しく書いています。 番手を決めたら、次は落とし所という順番になります。

第3段階: ウェッジで上げる

ウェッジは、上げるしかない理由があるときに持ちます。

バンカー越え、深いラフ、グリーンまでの間に大きな段差—— こうした「越えなければならないもの」がある場合です。 プロの武藤俊憲さんは、上げるか転がすかの判断を 「『エッジからピンまでの距離によって変わる』というのが正解です」と説明しています7。 エッジからピンまで距離があるなら上げてキャリーで寄せ、短いなら低く出して転がす。 ピンの位置ではなく、転がせる距離があるかどうかで決める、という考え方です。

グリーン周りの俯瞰図。花道のきれいな芝にあるボールAはパターでカップまで転がせるが、深いラフにありバンカー越えになるボールBはウェッジで上げるしかない。同じグリーン周りでも状況が番手を決める

上げる球でザックリ・トップが出やすい人は、 アプローチのザックリ・トップは同じ原因も合わせて読んでください。

迷ったら「10回打って8回」で決める

番手の理屈より確実なのは、自分の成功率です。

生見さんは判断基準をこう示しています。 「10回打って『何回成功するか』を自分に問うてみてください。 私は『8回以上成功しないショットや番手は選択すべきではない』と思っています」4

この基準の良いところは、個人差をそのまま吸収できることです。 サンドウェッジの転がしが得意な人はそれを使えばいいし、 パターが苦手なら第2段階から入って構いません。 順番は目安であって、最後に決めるのは自分の成功率です。

段階番手選ぶ条件
1パター芝の上を転がせる。深いラフ・段差がない
28番・9番・ピッチング転がすスペースがある。少しだけ越えるものがある
3ウェッジ越えなければならないものがある。転がすスペースがない

パターが向かない場面

深いラフ・濡れた芝・大きな段差があるときは、パターを外します。

芝が長いとボールが上がる前に減速し、距離が読めません。 花道が濡れていても同じで、転がりが一定になりません。 また、グリーン手前に段差やカラーの継ぎ目があると、そこで方向が変わります。

なお上で挙げたパターの数字は、実際のラウンドの記録であり、 条件をそろえて比較した実験ではありません3。 それでも順番の話として意味が残るのは、 やさしい状況でわざわざ難しい番手を選んでいる人が多いからです8やさしい状況を、やさしいまま処理する。それだけで減らせる打数があります。

まとめ

最初にやることは1つだけです。ウェッジを抜く前に、パターで行けないかを一度考える

そのうえで順番を付けるとこうなります。

  • 第1候補はパター。転がせるなら、外したときの傷がいちばん浅い
  • 第2候補は8番・9番・ピッチング。低ロフトのほうが寄せワン率は8ポイント高い
  • ウェッジは、越えるものがあるときだけ

やらなくていいことは、グリーン周りで高い球を練習することです。 寄せワンは3回に2回失敗するのが標準で、ピンに絡める前提の番手選びは分が悪くなります。 上げる技術は、越えるものがあるときのために取っておけば足ります。

そして順番はあくまで目安です。最後は「10回打って8回成功するか」で決めてください。

グリーン周りで落としている打数が本当に大きいのかは、人によって違います。 まずは自分がどこで打数を失っているかを確かめてみてください。

出典

  1. Shot Scope 公式ブログ(グリーン周りで何を使うか)および5 Stats to Know on Your Golf Game。記事内のチャートはハンデ15を対象としたもので画像のため、本文に記載された数値のみを引用している。母数の記載はない。「高ロフトを約2倍の頻度で使う」は本文の定性的な記述。 2

  2. Golf Monthly(Shot Scope提供のハンデ別比較)。寄せワン率はスクラッチ54%・ハンデ10で39%・ハンデ20で31%。ハンデ20はスコア95〜105が目安。

  3. Arccos「Save Strokes By Putting From Off The Green」。サンプル数・集計年の記載はない。「中〜ハイハンデ」はハンデ18〜25(スコア95〜110)が目安。実際のラウンドの記録であり、条件をそろえて比較した実験ではない(やさしい状況でパターが選ばれやすいという偏りを含む)。 2 3

  4. 生見和己「"パター"でのアプローチのやり方!」(ワッグルONLINE・2025-02-05)。エースゴルフクラブ西神田校のレッスンプロ。指導上の見解であり、統計的な検証結果ではない。 2

  5. 吉田洋一郎「アマチュアはグリーン周りに8番アイアンを持っていけ!」(GOETHE・2019-06-14)。デビッド・レッドベター門下のゴルフコーチ。指導上の見解。GOETHEは富裕層向けライフスタイル誌。

  6. 中井学「フラれるゴルフ Lesson.12」(GDOレッスン・2013-05-13)。指導上の見解。2013年の記事であり、用具の前提が現在と異なる可能性がある。

  7. 武藤俊憲「砲台アプローチ『上げる』or『転がす』、どっち?」(GDOレッスン・2015-06-15)。指導上の見解。同記事の1ページ目には、アベレージゴルファーの75%が「上げる」を選ぶという調査も掲載されている。

  8. グリーンを外したミスの約80%がショートサイドに外れるという集計(Shot Scope 公式ブログ等)。母数・集計年の明記はなく、業界で広く引用されている水準の数字として扱う。

よくある質問 FAQ

グリーン周りでパターを使ってもいいのですか?

問題ありません。Arccosの計測では、中〜ハイハンデのゴルファーはグリーンまでの芝が5〜15ft(約1.5〜4.5m)ならパターのほうが平均約0.10打、15〜25ft(約4.5〜7.6m)でも約0.15〜0.25打少ない打数で上がっています。ただし易しい状況でパターが選ばれやすいという偏りは含まれます。

アプローチで使う番手は何がいいですか?

パターが使えない場合は、8番・9番・ピッチングウェッジといったロフトの立った番手が候補です。Shot Scopeの集計では、これらのほうがサンドウェッジなど高ロフトより寄せワン率が8ポイント高く、ピンまで約1.8m近くに寄っています。

どの番手を選ぶか迷ったときの基準はありますか?

レッスンプロの生見和己さんは「10回打って何回成功するか」を自分に問い、8回以上成功しない番手は選ぶべきではないと述べています。番手ごとの理屈より、自分の成功率で決めるほうが実用的です。

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